夢をかなえるゾウ1

お正月休みで時間もとれるし、最近本読んでないし、ということで、なんとなくAmazon でポチったこの本。たまたま目に止まっただけなので、なんでこれを選んだかも覚えていません。

本が配達されるまでの時間「何買ったんだっけ」と注文履歴を見てみました。どうやらこの本「自己啓発本」に分類されるようです(え、そうなの…)。嫌な予感がする。とても嫌な予感がする。「自己啓発本は総じて内容が上っ面」というのがわたしのイメージで敬遠してきた(でもたまに気まぐれで買ってしまいその度失敗した)分野なのです。

内容が薄く、無駄な買い物でした…。読んでてイライラしてきて、途中で読むのをやめてしまいました。大まかな内容を知りたいって人は、web上に沢山サイトがありますので、それで十分です。

Amazon書評:Poteさん

うーん、不安しかない…

書名夢をかなえるゾウ1
作者水野 敬也
出版社文響社
ISBN-104866512415
AmazonURL

概要

お金持ちになりたい、成功したいと願う「僕」のところに、インドの神様「ガネーシャ」が転がり込んでくる。関西弁で、おちゃらけていて、自堕落で、およそ神様には思えない胡散臭いガネーシャが、「僕」の願いを叶えるために1日一つ「課題」を与える。

いわく、
 「靴を磨く」
 「コンビニでお釣りを募金する」
 「食事を腹八分目におさえる」
  …

こんな「課題」を約30伝えて、ガネーシャは「僕」のもとを去さっていく。

感想

400ページもあるこの本、そのほとんどは胡散臭いガネーシャと「僕」の掛け合いに終始しています。「早く成功の秘訣を教えてくれ!」な人にとっては冗長に思えるのでしょう。でもこの掛け合い、わたしは楽しめました。400ページが楽しく爆速で完読できました。つまらないやりとりとともに、「ええことゆうてはります」(あ、口調が移ってしまった)。

毎日ガネーシャが出す「課題」は、ガネーシャも言っている通り、あまたある「自己啓発本」のどこかに書いてあるような(わたしはほとんど読んだことないけど)ありきたりの内容です。しかも文字通りに受け取って実践しても成功者にはなれません。(「靴を磨く」を実践して成功者になれるなら苦労はない!)

「課題」として抜き出すと大したことを言っているわけではありませんが、ガネーシャが語るその背景からは、人間社会(わたし的には「浮世」)の根底にあるメカニズムの真理(ほめ過ぎ?)が見え隠れしているように感じます。

「ざっくり言うとな、稼ぎいうんは、どれだけ他人の欲を満たせとるか、それが数字にそのまま表れとるんや。腹が減った、眠い、遊びたい、気持ちよくなりたい⋯⋯人にはそういう欲があるわな。その欲を快適に満たして、対価としてお金もらうんが今の世の中では「ビジネス』て呼ばれてんねや」

p062

よいものを作る、とか、物理現象を解明する、とかは一人でできるけど、「お金を儲ける」というのは、そういうことなんだと思います。浮世で「お金をいただく」ことは一人ではできない、お金を払ってくれる誰かが必要なんだから。その「誰か」は何に対してお金を払う?その人の「欲」が満たされるから。

「人をほめる」という課題がうまくいかない「僕」に対して、

「ほら、ワシ、人の心読めるやん? まあいつも読んどると大変やから気が向いた時だけにしとるけどな。人が何考えとるか見ると、まあひどいで」
「どういうことを考えてるんですか?」
「まあ、ほとんどが自分のことやな。もっといえば、自分の欲がどうなっとるかっちゅうことやわ」
「自分の欲、ですか?」
「せや。「腹減った』とか『寒い』とか『嫌だ』とか『やりたくない』とか」
「なるほど」
「そんで、人と話してる時もたいがい考えてるのは自分のことやで。『この人、俺のことどない思てんねやろ』『俺、ナメられてへんか?』『うわ、緊張してきた』そんなことばっかやん」
「確かに、自分のことを中心に考えてる気がします」
「それがワシに言わせたら『自分にベクトル向きすぎ』ちゅうことになるんや。もっとふだんから他人を見とかんと。他人をよう観察して、この人はどういう特徴があって、どういう才能があって、どういう癖があって、どういう人なんやろてずっとそのことを見とかんと。そうせんとホメられへんやろ」
「そうなんです。自分のことばかり考えてると相手をどうホメていいか分からないんです」
「これはな、ホメることにかぎった話やないで。人の自尊心を満たす、人を気持ちよくさせる、それを自分らの知ってる言葉で「サービス」言うんやけど、たえず人を見続けとかんとサービスなんてでけへんやろ」

p222

ちょっと長い引用になってしまいましたが、わたしも『自分にベクトル向きすぎ』だと気づかされます。

「自分の中に足りないと感じてることがあって、そこを何かで埋めようとするんやのうて、自分は充分に満たされている、自分は幸せやから、他人の中に足りないもんを見つけ、そこに愛を注いでやる。この状態になってこそ、自分が欲しいと思てた、お金や名声、それらのすべてが自然な形で手に入るんや。だってそやろ?
自分らは、お金も、名声も、地位も、名誉も、自分で手に入れる思てるかも分からんけど、ちゃうで。むしろ逆やで。お金は他人がお前にくれるもんやろ。名声は、他人がお前を認めたからくれるもんやろ。全部、他人がお前に与えてくれるもんなんや」

p347

「お金や名声は、全部、他人がお前に与えてくれるもの」。

「自分が幸せになりたい!」とばかり考えている(自分にベクトルが向き過ぎ)と、幸せははるかかなた。でも、「周りもみんな幸せにしてあげたい」と願って行動していると、自然と自分も幸せがやってくる。お金も、成功も、名声も。

そういうお話なのでしょう。まとめてしまうとそれだけの話で、「そんなこと別な本にも書いたるわい!」となりますが、ここに至る話の流れがとてもよく考えられていて、説得力があります。ガネーシャのコトバをじっくり味わって納得することで、自分のマインドセットを変えていければよいですね。

おわりに

まとめると、「自己啓発本」として実利(この本の内容を実践してお金持ちになる!)につながるかは知らないけど、人間社会の構造を理解するためには示唆にとんだ内容になっています。

ガネーシャの課題を実直にこなすことで、お金持ちになれるとは思えませんが、「ものの見方/捉え方=マインドセット」を切り替えることで、幸せな方向に変わっていく可能性を大いに感じます。

お金は、人を喜ばせることでもらうもの。でも、誰でもそうだけど、やりたくないことや嫌なことではなく、好きなことや楽しいことしかできない。
だとしたら、人を喜ばせることが何より楽しいと思えるように自分自身を変化させていく。また、自分が好きなこと、楽しいと思えることで人を喜ばせるようにする。
それが成功したり有名になったりお金持ちになったりするための、回り道のように見えるけど一番の近道なんだと、僕はガネーシャの課題を通して学びはじめていた。

p272

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